さすがライブドア、さすがリーマンブラザーズ

Posted by michy on 2月 9, 2005 in お金っぽい, 法務っぽい

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「それはありなのフジテレビ?」

ライブドアがニッポン放送の株式を35%取得して、大騒ぎになっていますが、これにはいろいろおもしろいコトが潜んでいるようです。
結論からいうと「ライブドアの社長の堀江さんはよくそんなリスクをとったな!さすが経営者。リーマンブラザーズは抜け目ないね。さすが外資系金融」ってところです。
最初このニュースを見たときは、日本放送の株式35%を調達するためのお金700億円はライブドアが転換社債を発行して調達したこと、その引き受け先がリーマンブラザーズってこと、の二つしか知りませんでした。
転換社債っていうのはご存知のとおり、会社が紙切れを発行して代わりに利息を約束するモノである社債の一種にもかかわらず、一定の条件を満たすと株式に転換することができる権利を持った社債のことです。
社債なので、株式に転換しないと会社が倒産しない限り、満期に普通に貸したお金+利息が戻ってきますが、株式に転換するとお金は戻ってこず株式の本質であるところの会社に対する権利のみが残ることになります。
ちなみに、株式(株主権)というのは、会社に対する財産上の権利とかこういう風に経営したいっていう支配権とか、もろもろの権利を発行済み株式数で均等に等分した権利をいいます。
株式(株主権)=財産や支配権等のもろもろの権利/発行済み株式数(*)
転換社債の引き受け先がリーマンブラザーズってことは、リーマンブラザーズは引き受けにあたって社債の対価のウン百億円も出してるってこと。もちろん幹事手数料や発行手数料なんかはそれとは別にもらってるだろうけど。社債は一般投資家に売ることもできるし、株式にも転換できますが、ライブドアの株価や社債の価格が下がれば発行にあたって出したウン百億円と一般投資家の買取価格の差額はリーマンブラザーズの自腹のはずです。
ましてや、ウン百億円、右から左に簡単に株式にしたり売ったりできるようなものじゃありません。
売買っていうのは売る相手が成立しないと成り立ちません。ウン百億円の株式or社債を買う相手を見つけるのにどれだけかかるか。普通は大量に売りをかければ、売り圧力でそれ以上に株価や社債の価格は下がります。「みんな売ってるんだから、私も売らなきゃ!」っていう心理です。だから、ほそぼそと処分するしかありません。
ン百億円をほそぼそと処分するまでライブドアが業績を維持してる保証はあるのでしょうか?
「リーマン、えらいリスクとったな。そんな会社やったっけ。その社債、どこか買ってくれるアテがあるん?」とライブドアよりむしろリーマンブラザーズの行動にびっくりしました。
ところが、ぼーっとブログなどをみていると、「どうやらライブドアの発行した転換社債(CB)はCBでもMSCBらしい。しかも、ライブドアの大株主であるところの堀江さんはリーマンブラザーズに株を貸しているらしい」っていう話を聞きつけました。
MSCBっていうのは大学時代の専攻が金融だったくせに私も初耳だったのですが、社債の利息が0%(大抵)である代わりに、今の株価よりも割安な比率で株式に転換してくれるCBのことです。
例えば、アナタがCBを1200円分引き受けたとします。普通のCBならこの発行日の一定期間前の株価を基準として、それが400円ならいつまで経っても3株にしかなりません。でも、今の株価より30円割り引いた価格をもとに株式に転換してくれるMSCBならどうでしょう。ヤバイよ、330円まで下がってきたよ、ってときに転換したら4株にまでなっちゃうんです3→4株って33%も増えてます。いい条件です。

でもその代わりにたいては利息はつきません。1200円引き受けても、返してもらえるお金はいつまでたっても1200円。タンス預金かよ!って条件です。これは株式に変更しろと言っているようなものです。
会社は、このMSCBを使うと株式の公募よりすぐに、利息を負わずに大量の現金を調達できちゃいます。株式の公募って新聞に広告載せたり、応募期間を設けたりして時間がかかりますから。また、社債は、支配権がある株式と違って、会社に対する権利はお金の請求以外何にもないから利息なしじゃ誰も引き受けてくれません。というわけで、MSCBは発行会社にとって便利なわけです。
でも、既存の株主にとっては腹がたつことです。だって、*の式から発行済み株式数が増えれば株式の価値はその分、落ちるんです。分母が増えるんだから、値が減るのは明らかですよね。なのに、勝手に発行済み株式数を増やされちゃうんです。(貸してたお金が資本に入るので、まあ分子も増えますが)株式に変更しろって言ってるような社債なのに!
新株の発行なら、公募にしなきゃいけないとか、株主総会の決議がいるとか、いろいろ規制があるところなんです。でも、これは新株じゃないから、そういうこともできません。
ただの転換社債なら株式に転換する比率も決まってるし、利息ももらえるから全員が転換するわけじゃないだろうけど、MSCBはそのまま持ってても利息ゼロなんだから、まず株式に転換します。(っていうか転換社債には規制はあるんだっけ?そもそもないならなんでないんだっけ??忘れました←ふぉーりん・あとにーの憂鬱の理想と現実~ライブドアMSCBに想ふことにて、「著しく有利な価額」のCB発行には株主総会決議がいるとのご指摘をいただきました。ありがとうございます♪やっぱり、規制はあるんですねー。しかし現状は…)しかも、株式は必ず株式を転換する時点の株価より安い価格なんです。(正確には社債の株式の転換比率が現在の株価より有利である)ムカツキます!
でも、これで引き受け会社は(引き受け価格によっては)得をすることができます。その仕組みはこんな感じです。まず株式をたくさん持ってる人から株を借りて、それを売ります。売り圧力で(普通なら)株価が下がります。下がったところで、MSCBを株式に転換します。株を借りた人には、転換で得た株式を返します。社債を引き受ける(買う)ときに、そのときの会社の株価を基準に社債の価格を決めていれば、
売り圧力で下がった価格(市場の心理的要因)+株式が増えたことによる株価の下落+転換時の割引価格
分だけ得です。

実際には新株発行で株価が下がることは分かってます(*でも新株を発行するっていうと、なぜか株価はあがることが多いでようです。会社の価値があがるわけじゃないのでいつも謎ですが)し、転換時に割引することも決めてるわけなので、もうちょっと低い価格になる気もしますが。
もうちょっと詳しくは、「ダントツ投資!:MSCBを狙っちゃえ!2」をご覧ください。
で、今回の件をみてみると、MSCB発行会社ライブドアの大株主であるところの堀江さんはリーマンブラザーズに株を貸してるらしい。(これはインタビューで答えてます。R30さんのライブドア堀江貴文社長記者会見質疑応答参照)ああ、なるほど。ポンって感じです。リーマンブラザーズっていうのはこういうことを考えたんだな、って。抜け目ないですね。
リーマンブラザーズの思い通りいけば、損をする人がいたとしても、それは既存株主です。ライブドアの大株主は堀江さん個人なので、堀江さん個人がこの発行で一番リスクをとってることになります。維持でも提携を成功させて、ライブドアの株価を上昇させないとダメです。
これとは別のお話で、「1/3ルール」ということがあることも知りました。上場会社の株式を買い付けるときは市場による公開買付けによらなければいけないという決まりがあるそうです。(法務のくせに「そうです」ってカッコ悪いですが…)で、今回の取引は判例も出ていないし、実務家の間でも違法なのか違法じゃないのか意見が別れているグレーゾーンの部分での取引らしいということ。
詳しくは、「「ライブドア参戦」のM&A業界へのインパク(ふぉーりん・あとにーの憂鬱より)をご覧ください。尚、同ブログのライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(1)ライブドアのニッポン放送株式は「違法」・・・だなんて、滅相もありません(2)で「まあ、グレーゾーンとはいってもあまり危険はないのかもね」ってことが書かれております。
やるなあ、堀江さん。経営者ってそこまでリスクをとるんだね。そして、リーマンブラザーズ、らしくないと思った私が悪かった。きみたちはきちんとリスクヘッジしてるんだね。さすがリーマンブラザース。

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29 Comments

  • 理想と現実†ライブドアMSCBに想ふこと

    さすがに週明2日で旧ネタ利用を含めて記事4つは疲れました・・・ので、ここらでもうちょっと徒然に今回の件で想ったことを書いてみます。
    今回のMSCBは本当に悪いのか†理想編
    ブログ界を見渡すと、株式取得の違法性の話やライブドアの狙いといったところから、MSCB…

  • ホリエモン 権力捨てて 何目指す

    ライブドアの、ニッポン放送買収の資金源は一種の転換社債、いわゆるMSCB(要は借金に見せかけた新株の大バーゲン価格発行w)だったワケですが、転換社債ってさ、
    株で返して良い借金
    じゃなくてさ、
    株で取り立てて良い借金
    なわけでしょ。

  • ライブドア あとに トラックバックを受けて思ったこと

    47thさんの、
    ふぉーりん・あとにーの憂鬱
    を読んでいて気づいたこと。
    ・発行体のコール・オプションについて
    >「理論的」には、これが引受側のペイオフの上限になるわけです。
    確かにおっしゃるとおりですね。
    あとは償還のための資金をどこから集めるか。。。

  • ライブドアのファイナンス~3~ 転換価額と発行株数の関係を考える

    ある方からのメールより、
    「ライブドアの転換価額と発行株式数の関係について」
    というのがありましたので、ざっとまとめてみます。
    <前提>
    社債総額 800億円
    当初転換価額 450円
    下限転換価額 157円
    発行済株式数 643,250,879株
      (Source data:ヤ…

  • 日枝です より:

    このブログを見て、堀江さんが株を貸したという理由がようやく分かりました。ありがとうございました。

  • 47th より:

    TBありがとうございます。
    ただ、何かの手違いだと思うのですが、同じ記事に複数のTBを頂きましたので、重複分は削除させていただきました。
    不都合があれば、御連絡頂ければ幸いです。
    法務の仕事、いろいろと大変そうですが、頑張ってください。

  • Michy より:

    >>日枝さま
    自己満足で作ったエントリだったのですが、お役にたてたみたいですっごく嬉しいです。
    >>47thさま
    TB、複数になっちゃったのは手違いです。お手数おかけします~。
    憧れの47thさんからコメント頂けて幸せ~♪

  • MSCBな週末。

    ライブドアによるニッポン放送株取得を巡るフジテレビとの争い関連記事にて、リンクさせて頂きました。

  • 百鬼夜行 より:

    ライブドアのこととか†オーシャンズ11ばりの買収劇

    ライブドアの株式買収劇。僕もフジテレビには、友人が少なからずいるので・・・という

  • うめひろ より:

    MSCBでリーマンが800億円分の新株を貰った時、それがライブドア株の時価総額の1/2を上回っていた場合、リーマンがライブドアを乗っ取れるってコトでしょうか?
    リーマンが借株を売って暴落させたりとか・・・。

  • Michy より:

    >>うめひろ様
    そうですね。(MSCBに株式転換時の株式数の上限がないのなら)理論的には可能だと思います。(って、私もMSCBのことはあんまり詳しくないのでアテにしないでくださいねー)
    でも、リーマンは利ざやをとったりする会社なので、ライブドアの支配権もらっても嬉しくないんじゃなかなー、と思いますです。

  • NY11201 より:

    そんな楽観できる事態じゃないような。。
    最近おかしなことが多すぎる気が。。
    日本人として何かいやな予感がします。

  • 借株について本気出して考えてみた

    最近頻繁に話題にさせてもらっているtaka-mojitoさんのライブドア、ニッポン放送株35%を取得を読んでいて、借株についてこんなコメントが。
    ただ、よくよく考えてみれば、LB証券としては、ライブドアに貸した800億円が株式に化けるに過ぎないわけで、ライブドア株を長期…

  • NY11201 より:

    因みに前の投稿のリンクは私のサイトではないです。
    まぎらわしくてすみません。

  • shusan より:

    2月18日ライブドア前日比-10.39%、さがってます。まさしくリーマンの思う壺、堀江さんの思う壺かな!MSCBのうまみをチャンと利用してるね。Livedoorの検討を僕はたたえたいです。勝負はこれからだと思います。系列・公共電波・前例・根回し・・僕には嫌な言葉です。開国による外国資本をドウ相手にするかは、これからの日本を占う羅針盤かもしれませんね。

  • 春希 より:

    こんにちは、はじめまして。
    もともとMSCBとは資金繰りに行き詰まった企業が
    発行することが多いみたいです。そして過去にMSCBを発行した多くの企業が株価低迷。
    ライブドア。ほんとにどうなってしまうのでしょうね

  • Michy より:

    >>NY11201さま
    アメリカのようになってくんでしょうねえ
    >>shusanさま
    リーマンと堀江さんの思惑は違うと思います。今回は、リーマンは株もいっぱい売ってるみたいですし、全然OKだと思いますが、堀江さんは株が下がるのは嬉しくないでしょうね。リーマンが売っても下がらないくらいの人気を保とう!くらいの気合いだったんじゃないかなーと思います。
    >>春希さま
    だいじょうぶなんですかねーライブドア。今回、株を買い足したのも、どこからお金が!?もしや、やっぱり日本放送株を担保に?って感じで心配しちゃいます。

  • チョッパー より:

    はじめまして  へー リーマンブラザーズって本当の兄弟がつくった会社なんだ。 日本語だったら 株式会社 鈴木兄弟 佐藤兄弟とか、そんな感じだろうけど、英語で聞くとあまり違和感ないですね。
    そもそも 年間100億もあげてないライブドアに対して800億ものお金を貸すなんてなんてリスキーなことする会社だろって思ったけど、このホームページの転換社債の説明を読むとなるほどって思いますね。(説明がわかりやすくていいですね)        仮に10%割引の条件付の転換社債なら100万円分の株式を90万円分の転換社債で交換してもらえるってことですよね? ライブドアの株価が上がれば、交換して売ってその差額で利益がでるし(すぐ売れるかどうかは別として)、下がってから交換しても、その分たくさんの株が手に入って後で株価が戻ってきたころに売ればとんでもない利益を得たり、ライブドアそのものを支配する形にもなり得るわけだ。     どんな人がこういう融資を考えるんでしょうね?
    お仕事がんばってください。
     

  • Tie+ より:

    > 日本語だったら 株式会社 鈴木兄弟 佐藤兄弟とか、そんな感じだろうけど、
    近江兄弟社(メンタームの会社)とか、姉妹社(今は解散)とかがありますね。

  • 最近この問題が騒がしいですが、
    時代の変わり目にいるのでしょうかね。
    評論家は役に立たないこともわかりましたが、
    それにしてもテレビ局って神聖不可侵なものという幻想みたいなものを
    持っている人が多いことには意外性を感じますが。
    これからはネットの時代なのでしょうか。

  • michy より:

    >>チョッパーさん
    スキームを考えるのは、どっかの会社の頭のいい人で、そうするといっぱいお金がもらえるんだと思います。法律家でもそういうお仕事をしてる人は、とてもお金がもらえるようですが私には縁のない話です…。
    >>Tie+さん
    フォローありがとうございます。勉強になります。
    >>Yangleeさん
    評論家が役に立たないというより、役に立つコメントをするとテレビに出してもらえないんじゃないかと思ったりします。
    現在のようなテレビを欲してる人もいるだろうし、「テレビの時代の終焉」とは思いませんが、「テレビ一極化の終焉」ではないかと思います。
    貧富の差が二極化しているように、どのメディアに接するかも別れてくんじゃないかなー、と。

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  • 不言実行 より:

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