「クラインの壷」岡嶋二人
私が同じ作者の「そして扉が閉ざされた」を読んだ、というと美容室の美容師さんに紹介された本。
「そして扉が閉ざされた」は、何か推理小説が読みたくて、「このミステリーがすごい」のランキングを見ていて、気になったタイトルだったので図書館で予約して借りてみた本です。1988年国内6位です。映画の「CUBE」ばりに密室に閉じ込められちゃって、脱出しよう!という作品でなかなかおもしろかったです。恐がりの私は、それからしばらく一人になるのが怖かったです。
その作者の岡嶋二人さんというのは、実はコンビの名前だったらしく、そのコンビとしての最後の作品がこの「クラインの壷」とのことです。よく見てみたら、このミスでも1989年国内5位。1989年いえば、8位の「生ける屍の死」も、死者が生き返っちゃう世界っていうあり得ない設定でのミステリなんだけども、それがおもしろおかしくリアリティがあって、かなり好みだった。いい年だなあ。これより上位ということで、かなり期待!
しかし、この岡嶋二人さんの本の表紙は怖いですね…。文庫版もあまりない図柄ですが、ハードカバーの怖さがすごいです。もう「そして扉が閉ざされた」は返却しちゃって、ご紹介できないのが悲しいですが、「クラインの壷」はこんな感じ。

この変な絵がクラインの壷かと思ったら、クラインの壷というのはメビウスの輪の四次元版のことで、この物語の中では究極のバーチャルリアリティで体感できるゲーム(まるで「ハンター×ハンター」のグリードアイランドのように)の装置の名前でした。
肝心の内容は一時代前ということで、テクノロジー面などでは突っ込みどころもあるのですが、面白さは色あせない感じで、とても楽しめました。ネタばれになっちゃうので、あまり深く感想を書くのは遠慮しときますが、その根底に流れるテーマっぽいのに、ものすごく共感しました。
しかし、あんまり突っ込みたくなったので、ネタバレにならない程度にツッコミをいれます。
この本は最初いきなり契約書の添付から始まっているのです。法務のサガがさわぎました。昔の契約書で条文が少ないので、思わず赤入れをしたくなるー。裁判管轄がないってどういうこと!?個人相手の取引だから振込口座書いておいたほうが安心だって!権利侵害のときの条項がまったくないんだけど、大丈夫?
また、「無限の記憶容量が必要になる」といって、「テラバイト単位」と出てくるのですが、今やテラバイトって全然無限じゃなくて手が届く範囲だなー、と思って時代の進歩にびっくり。この頃のパソコンに入ってたのは、1メガバイト(フロッピー1枚?)のメモリだったそう。1989年って16年前になるから、確かにそれくらいなのかもしれない。あの頃のDOSって確か1メガバイトっていうメモリ量の上限があったような気がする。もうちょっと後にそれだけのメモリ空間じゃどうにもならなくなって、Windows 3.1を動かしたりするためには、CONFIG.SYSでメモリ空間を延長させる(?)HIMEM.SYSを組み込まなくてはいけなかった気がする。懐かしいなあ。
ま、そんな細かい突っ込みどころはともかく、文書はとても読みやすく、トリックや仕掛けも文句のないできです。そして、確かにクラインの壷だよね、というエンディング。好きだなあ、こういうの。
そういえば、私は一時期ものすごくFFXIにハマっていた時期があって、あまり仕事もせず、すごく無理して定時退社をして、家に帰ってはずーっとヴァナディール(FFXIの世界)にいて、その頃
「ねえ、お金もあるし、人もいる。ステータスを満たすものもある。お金や経験値も稼がないといけない。規約違反だけどヴァナで他人のキャラを育てたりして稼いで、リアルのお金にすることもできる。ヴァナディールとリアルってなにが違うんだろう?」
と口走って夫の怒りを買っていました。
実はその答えは今もよく分かってないです。ヴァナは参加者は少ないけど、リアルは参加者が多いから、リアルでお金を稼いでステータスを得たほうが、なんとなくいいことがあるってことかな、っていう相対的理解でいます。今は全世界で出来るようになったから、ヴァナのお金をリアルのお金に換えるレートが以前より下がって、リアルの地位が私の中で浮上してきたし。それとも、非現実世界は秩序が気まぐれで変わりやすく、いつ終わるとも知れない、ってことにも違いはあるのかしらねえ。そんなことを思い出しました。
そして、心に響いたのが引用されていて台詞。
「はじめのところから始めて、終わりにきたらやめればいいのよ」
なんでか分からないけど、その単純さに、こんがらがっていた意識がもとに戻される「ああ、単純でいいんだ」っていう安心感を感じて、すごく共感しました。難しく考えそうになったら、この言葉を思い出そう。












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