「果つる底なき」池井戸潤
Amazonで適当に選んでいたらお勧めされた本。金融小説+ミステリ(江戸川乱歩賞)ということで、「私が読まずに誰が読むのかしら!」と思って読んだ本。
感想としては、読みやすくていいですが、そこまでおもしろくもなかったです。乱歩賞は好みの本が多いので期待しすぎたのかもしれません。「亡国のイージス」福井 晴敏(in this blog)の前作としておなじみ、同時受賞の「Twelve Y.O.」のほうが圧倒的に私好みです。
私にとって何が駄目だったかというと、まずやたら人が死ぬこと。手がかりを持ってる人に主人公に接触したらすぐに話が終わっちゃうから、殺したり行方不明にしたりせざるを得ないという作家側の理屈で殺されてる気がします。犯人のそもそもの動機でそんなに人を殺すかなー、という感じなのです。結構バレそうな犯罪なんだし、もし気づかれそうになった人は全員殺すつもりだったら犯人は最初から数十人の殺人は覚悟して犯行を始めたってことかしら?もしくは浅はかにもまったくバレないと思ったのかしら。うーん、よく分からない。
それから、金融小説というわりには、金融トリックがたいしたこと無くて、やたら足を使った推理が多いこと。銀行員ではなくて一般人でも推理できそうなんですけど…。せっかく著者も銀行出身なんだし、もうちょっと手の込んだトリックにするとか、専門知識を生かして安楽椅子探偵をするなどの活躍が欲しかったです。
最後は、著者の出身が三菱銀行のためか、なんとなく三菱節が感じられるところ。その職業のかたには申し訳ないのですが、三菱系というのか財閥系やお役人と言われる人って、選良意識というか「オレたちが○○してやってる」っていう意識が強く感じられる人が多く、そういう人はどうも苦手なんです。「メーカーなんてお金儲けのことしか考えてないんだろうけど、オレたちは日本の将来を考えてるんだ」と考えてるような印象を受けるんです。
私にしたら何をそんなにしょってんだ、くだらないプライドもってるんだという感じ。そして、まあ、そんなことを考えつつも本当に日本の将来を憂えてくれたらいいんですけど、顧客や市民からお金をもらってるなら、当然に見るべきことも見ず、言うべきことも言わず、自分の将来の確保や利権の確保に走ってたりするような人がいるような報道を多く聞くにつれ、「もう、なにそれ!」と思ってしまいます。女子供の価値観かもしれないけど、勧善懲悪が好きな私には許せない世界です。
そんな「オレたちが~」精神を主人公からも感じるんです。主人公の台詞「私たちが助けなければ何人もの人が路頭に迷うんです」って、まあその通りなんですけど、なんだか上からものをみてる感じがしてツライ。いわんや、他の派閥荒にいそしむ登場人物をや。お金に関わることをしていると、ドロドロしていてイヤなことやつらいことも色々あるだろうから、そういう義務感や責任感が無くてはやっていけないのかもしれませんが、対価をもらう相手(サービス相手)を見下すようになったら終わりだと思ってます。法務も含めた管理系の職種も社内のサービス相手に対してそんなこと思うようになったら終わりだと思うんです。
本当に銀行ってこんなところなのかなー。融資先をコマのように思って派閥争いにいそしむ銀行員って高杉良の小説の中だけだと思ってたんだけど、この小説でも同じようだから本当の銀行もそうなのかもしれない、と思ってしまった。だって、大学毎に「学閥」があって「お前は○○閥なのにオレに味方するんだな」のような台詞を登場人物が言うんですよ。平成の世にそんな台詞があることが信じられない。また、やたら必死に自分の為にモノを取り返そうとする人が、「銀行の将来のために必要だ」って言って取り戻そうとしてて、その言葉に動かされる人がいるって設定!?と驚愕です。
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金融小説なら、「お金持ちになれる黄金の羽の拾い方」で有名な橘玲の「マネーロンダリング」のほうが金融知識満点なうえに、びっくりのラストでおもしろかったです。こちらは国際金融で、主人公も元外資系銀行マンということで、「これからは国際派!」と思ってる私とシンパシーがあったのかも。
ちなみに、自ら現場に赴かずに手元にある証拠だけで推理する探偵って「安楽椅子探偵」っていうんだっけ?と安楽椅子探偵を調べていたら、「九マイルは遠すぎる」がひっかかって、「あ、この本、図書館で借りただけで購入してなかったんだ」と思わずAmazonで購入してしまいました。
まだ読んだことのない人は変な書評などをみる前に買ってよむべきです。ちょっとでもミステリ好きなら、いやミステリ嫌いでもこの本はお勧めです。「九マイルは遠すぎる、ましてや雨の中ともなれば」というこの言葉だけからすべてが推理されます。













ハリー・ケメルマンですね。
いや、なつかしい・・・というか早川ミステリ文庫に残ってるというのがすごい(^^;)。
ろじゃあはポケミスの方で読みました。
ろじゃあ的には安楽椅子探偵物ではジェイムズ・ヤッフの「ママは何でも知っている」あたりもおススメですよ。
ハヤカワミステリはかなり見逃せないです。
他にも一緒にいろいろお勧めされたもの(ほとんどハヤカワミステリ)を購入してしまいました。
「ママは何でも知っている」もすごくおもしろそうですね。
でもお値段が張りそうなので、図書館に予約に走ります。