「白昼の死角」高木彬光

Posted by michy on 12月 17, 2005 in フィクション, 法務っぽい

「白昼の死角」

私がまだ大学生で司法試験の勉強をしていた頃、予備校の講師に「手形小切手法をきちんと学びたかったから、小説などを読んで実際に使われる場合の理解を深めるのが近道ですね。僕のお勧めはタカギアキミツの『ハクチュウノシカク』です」と言われて、「ハクチュウノシカク」?どんな字かしら、「白昼の刺客」?などと思いながら探し当てた本。
母に私の叔父が若い頃熱中して読んでいたと聞きました。それだけ古い本で、前半の始まりは手形と関係なく株と金融のお話で始まったりするので、少し懐疑的に思いながら読み勧めましたが、そんな心配など全く杞憂でした。
手形小切手法を勉強するなら、時代を超えてお勧めできる本です。手形なんて興味が無くても、ちょっとしたビジネス小説なんかで手形が出て来て、「裏書」「割引」「振出」なんて言葉の意味がなんとなくしかつかめなくてもやもやってするときありませんか?そんな貴方も一読すれば手形のスペシャリスト…、とまではいきませんが、輪郭はかなりつかめると思います。
また、前半は東大生が行った闇金融として有名な「光クラブ事件」を作者独自の視点から取り上げています。この部分の出来も見事です。知り合いに「株ってどうやったら儲かるのかな?」と問われたときに、この部分に出て来た運用論を語ってみたら、「みんな同じことを言うね」と関心されました。時代を超えて普遍的な事件だと思います。特に、当時と同じようななバブル一歩手前のような今には、読んでおいて「こんな手口にはだまされないようにようしよう。株はやっぱり難しいなあ。うまい話には裏があるなあ」と思うのに良いかもしれません。
後半から始まる、主人公の手形を使った犯罪の手口は見事としかいいようがなく、未だに読んでも関心させられます。最初は本を借りていたのが、何度も読み返したくて思わず購入してしまいました。終わり方も最初に繋がっていて見事です。私が敬愛する島田荘司も尊敬する作家、故高木彬光随一の傑作ではないかと思います。
高木彬光氏が1995年に他界されたために、今は新装版が出ています。
私はこの本で高木彬光の存在を知り、読み始めました。ただ、私にはどうしても作者と相容れない世界観がありました。この本だけなら気にならなかったのですが、作品全部が全部から、作者の「仕事のできる男たるもの、愛人の一人や二人くらいいるのが甲斐性ってもんだ」という女性観が見えてくるのです。
私は仕事もできて、妻だけを愛する夫ってやつが好きだー!!!
そんなわけで、私の高木彬光探訪はあまりの価値観の相違に途中で挫折することになりました。それさえなければ、神津恭介シリーズなんていかにも私好みなのになあ。

「ナニワ金融道」

ちなみに、同じ予備校講師には、民法ではナニワ金融道を勧められました。こちらも当初漫画喫茶で読んでいたのものの、何度も読み返したくなり、我が家に文庫で全巻あります。民法、商法に興味があるなら一読をお勧めします。


(060128)今なら冒頭の「光クラブ事件」は、ライブドア事件と比べて読むと興味深いと思います。当時は貸金でしたが、大衆から小金を集めて違法すれすれの事業をするというのはとても似ています。

「(略)僕がどれほど法律を研究してみても、この仕事には違法性がないのだ。ただ、ひっかかるとすれば、銀行法違反が精いっぱいのところだが、なに、警察の連中には、そこまで法律を研究している人間は、一人もいやしないよ」

このように自信家だった作中の隅田が検察の突然の捜索を受け、逮捕されるシーンはまさに今の堀江さんの状況と照らし合わせると興味深いです。今後どのように展開するのか気になります。

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