「ワイルド・ソウル」垣根涼介

Posted by michy on 2月 15, 2006 in フィクション

「ワイルド・ソウル」
垣根涼介

「容疑者Xの献身」東野圭吾(in this blog)を貸していただいたときに、「おもしろいですよ」というメモとともに一緒に貸していただいた本です。にょろぞさん、いつもありがとうございます♪
一見して思ったのが、私なら「絶対に人に勧められなかったら読まないだろうな」という本だということです。帯によると、第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治文学新人賞、第57回日本推理作家協会賞という史上初の三冠とのことで、「三冠」ということでは「容疑者Xの献身」とお揃いですが、最後の賞以外まるで私は興味がありません。帯の「日本国政府に復讐せよ!!最上級の興奮と感動を描き込んだ、爽快感溢れる奇跡のエンターテインメント!」という文言も、帯に言葉を寄せてる3人の作家大沢在昌、北方建三、逢坂剛もすべて読んだこともなく、今後読むこともないだろう、と思われる作家陣です。
しかも、読んでいて途中で「あれ?なんかこんな本読んだことあるなあ」と思って気づいたのですが、著者のデビュー作「午前三時のルースター」も私は何かのきっかけで読んでいるようです。ただ、この本もベトナムを取り上げてるあたりはおもしろいものの、重い話題をさらっと流されている感じで、展開が読め、おもしろくなかったわけではないものの、積極的に次回作を読みたい、と思うほどではありませんでした。
唯一、私が積極的に読む要素とすれば、2003年の「このミステリーがすごい」の10位ということでしょうか。
が、しかし、読んでみて、そんな先入観をこなごなに砕かれるような気がしました。とてもおもしろかったです。「午前三時のルースター」では賞に応募する関係上、ページ数の制限などがあって、重い話を突っ込んで書けなかったのかなあ、と思いました。
最初に、アマゾン移民の話から始まるのですが、どうやって取材したのか聞きたいほど、その筆致は巧みでその世界に引きずり込まれます。私はブラジル移民の話は知っていたのですが、「ブラジルに行って成功した日本人がいる。とても勤勉で日本人は尊敬されたらしい」くらいの知識しかなかったので、アマゾンの未開拓地に、騙されて移住させられた日本人がいる、という話はとてもびっくりしました。
体調が悪くて大変暗い気分のときに読んだのですが、始まりは、なんというかその気分にシンクロする感じで、とても心地よかったです。
そこから普通のミステリー(?)っぽく、「日本政府への復讐」という一連の計画が始められます。誘拐モノにおける誘拐っぽく、用意周到にその計画は練られていて、読んでると「成功するのかしらドキドキ!」としてきます。身元がバレないように、などという準備もきちんとされていて、「よく調べてあるなあ」と感心してしまいました。
そして、特筆すべきはラテン系の主人公の、なんというか、そこ抜けた明るさ。復讐を志しているものの、その行動はある意味とても陽気で爽快で、読んでいてくだらないことに悩んでいるのがつまらなく思えて来ます。最初の暗い導入から、この陽気で突き抜けた主人公が出てくるあたりが、そうそう書けない小説だと思わされ、読んでいてとてもおもしろかったです。
また、少し出てくるメディアと女性の話もよく調べてあって、物語に華を添えています。特にラストは女性として感動してしまいました。いいなあ。
ちょっと落ち込み気味のとき、「日本の恋愛ってヌルいのよ」と思ったとき、え?アマゾン移民ってなに?って人にオススメです。

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2 Comments

  • にょろぞ より:

    先日、日テレの深夜で放送された「NNNドキュメント」の
    「楽園は 何処に…  祖国を訴えた日本人 」
    という回がまさしく棄民政策のことでした。
    http://www.ntv.co.jp/document/
    外務省の現状の返答は「時効」でした。酷いっすね。
    金額の問題ではなく、役人の面子だけで裁判を引き伸ばし
    しているようにしかみえません。
    CSで再放送もあるそうなので、機会あればみて
    ください。小説はスカッと終わりますが、現実は
    重いです・・・

  • michy より:

    情報ありがとうござます。今週の土曜日に再放送なんですね。録画してみます。
    昔、告発本みたいなものを読んで以来、外務省のイメージはよくありませんが、またまた悪くなりそうです。そして、こういうことに何も出来ない司法って本当に独立してるんですかね…。

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