「P.I.P.-プリズナー・イン・プノンペン」沢井鯨

Posted by michy on 6月 26, 2006 in フィクション

「P.I.P.
プリズナー・イン
・プノンペン」
沢井鯨

先輩のおうちに遊びに行って、「本が好きなんですー」と言っていたら貸してもらえた本です。読んでみてすごくおもしろく、そして自分の無知を痛感しました。
実際にカンボジアに旅行して投獄もされた作者がその体験をもとに執筆した話で、どこまでがフィクションか不明なために発売が延期されたりした(ただの宣伝文句かもしれないけど)本らしいです。カンボジアの現状、近年の歴史などが織り交ぜられた物語で、カンボジアについてまったく知らなかった私は結構衝撃を受けました。
カンボジアはアフリカにあるのかと思ってた(これでもセンター地理選択…)し、ポル・ポト派が「なんか虐殺とかやってる団体らしい」というおぼろげな知識はあったのですが、カンボジアを治めていたことがあるとは思っていなくて、いわゆるベトコンの親戚かと思ってました…。「ワイルド・ソウル」(in this blog)を読んだときもブラジル移民問題について全然知らなくて、自分の無知に悲しくなりましたが、それに似た悲しさを感じました。
もう少し近年の歴史問題を学べ、という感じですね。悲しくなって本屋で「近代の歴史」などを読もうとしたのですが、よく考えると私はとにかく歴史が大嫌いでミステリ仕立てに書いてもらえないと興味を維持できないことを思い出してやめました。どなたかこんな私にも読める、ミステリや漫画仕立てで、近代の歴史問題が学習できる良書があったら教えてください。ちなみに、マイブームは南アフリカのエイズ問題(ウェブでちょこちょこ読んでいます)で、一冊につき一テーマくらいが私の限度です。
それもこれも世界史の勉強がアウストラルピテクスあたりから始まるからだと思って、「ドラゴン桜」ではないですが、「歴史は近代からやるべきだ!」との思いを新たにしました。近代の歴史なら今の問題に繋がっているから興味も維持しやすいし、身近な人に詳しい物語も聞けるし、資料も豊富だし、いうことないのに!文部省も検定教科書を見直して欲しい…。
話は戻って本書ですが、カンボジア/ベトナムへの大国の干渉や、それにによって派生した種々の問題、ポル・ポト派の変化の歴史などが興味深く綴られていました。ポルポト派のたった5年(だったと思う)の統治によって人口の1/3が死に、ポル・ポトをそんな行動に至らしめた動機については未ださだかに分かっていないというあたりはびっくりしました。身近でそこまでの問題があったのに何で今まで無知でいられたんだろう…。そこまでの虐殺があったからには当然今生きている人で虐殺にかかわっていた人はたくさんいることが本書でも指摘されていて、悲しい問題だな、と思いました。
今度の小泉首相のアメリカ訪米で、アメリカ側は「昔、戦争した日本と我が国はこんなに友好的だ。イラクともうまくいく」とアピールするつもりらしいですが、カンボジアやルワンダの例をみると大国の干渉はかなりの確率で悲惨な出来事をもたらしている気がします。自画自賛ですが、日本でうまく行ったのは、「和魂洋才」なんていうことができる養老先生がいうところの「無思想」(「無思想の発見」参照)が根底の日本だったからじゃないかなー、と思いました。…そういえばインドがうまくいってるっぽくみえるのは何でだろう。多神教だからかしら。
また、こういう助けや教育を受けられない環境にいる子供たちの話を読むと、ニュースで「○○ちゃんを助ける臓器移植を行うためには一億円必要です」なんてやってる日本って恵まれてるなあ、と思いました。命に重さはないと思うものの、1億あったらどれだけの人が助けられて、どれだけの人間が教育を受けられるのかな、と考えてしまいます。でも、こういう考えをつきつめると、今現状自分の食い扶持すら稼げていない私を生かすためのお金なんて果たして使うべきかしら、なんて考えになっていってブルーになるので問題を認識するだけで思考停止して逃げています。
と、ここまで色々考えさせられた話を書きましたが、本書を、純粋に「ただの物語」としての評価をすると、伏線はそれなりにうまく張っているものの、駆け引きもありきたりだし、先も読めるし、文体も歴史問題の解説になると本体からは分離したような文体になるし(それでも読みやすいのですが)、「どこまでかフィクションかノンフィクションかの問題作」というわりには「男の夢がつまり過ぎてるな」と思ってしまうラストだったりしたので、カンボジアについて詳しい人にはオススメしません…。

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