「ビジネス著作権法」荒竹 純一
法律書の多くにいえることなのだけれども、中でも著作権法は近年注目をあびるようになってきた分野なのにもかかわらず、理論的な説明や理想論的な説明が多く、具体事項に落とそうとすると曖昧でいまいち使い勝手が悪い本が多かったように思います。
また、実際の運用がどうされているのか、ということを確かめようとすると、その業界ごとのいろいろな本にあたらざるをえません。そして、業界向けの本というのは、法律については少し述べてあるだけだったり、独特な用語を使っていたり、誤解をうめそうな口調で書いてあったりして、「あれ?法律論でいうとどうなるんだっけ」状態に陥ったりすることもあります。結局、類例を調べようと思うと、もう判例百選の過去記事をあたらざるを得なくなったりします。(最高裁判所の判例検索は便利ですが、実務のリファレンスにはあまり向かない気がします)
そんなイライラがたまっていた私に「ビジネス著作権法」はビシっときました。…多少「メシのタネがなくなった」と思った感がなきにしもあらずではあるあたり、私も一人の人間なのですが。
法律論というよりは、「ビジネスにおいて著作権法を利用する際のリファレンス」として使いやすいように、実務で問題になることに重点をおいて書いてあります。書き方も平易で読みやすいと思いました。
私が調べた限りでは、記述がほとんどなくてムカついた「派遣労働者が著作権を作成した場合、派遣先企業での職務著作となるか」という問題についても、多数の著作の意見を注釈で拾ったうえで「争いがある」が著者はこう考えると記していて、非常に役に立ちます。個人的考えでは「争いがある」場合は、全部契約書を作りたいです。
また、判例の引用も多く具体的で、結局、この著作物の「依拠」や「著作物性」ってどう判断されるのか、といったことにも判例が多彩に引用されていて、本当に実務に使えそうです。例えば、「依拠」→「言語の著作物」→(1)フィクションの中で(1)「ぼくのスカート事件」(2)先生、僕ですよ事件、(3)悪妻物語事件控訴審、とさしてメジャーではない判例が3つもとりあげられています。もちろん、美術の著作物などの場合にはきちんと写真も掲載されています。その他の分かりやすい例としては、ゲームストーリーの変更と同一性保持権の問題でも、(1)三国志控訴審(2)ネオジオ事件第一審(3)ときめきメモリアル事件上告審(4)裸体画像事件控訴審(すごい名前ですね…。DOAのヤツです)と4つも例が取り上げられています。
それぞれの業界において実務がどうなっているかということも、きちんと記述されているのが、さらに役に立ちます。その業界にいる人には当たり前ですが部外者は案外知らない、複製防止技術とコピーガード・キャンセラーについての記述(それが「スタビライザー」として未だに一般に流通していることには、さすがに言及が無い)、半ページではあるものの通常フリーウェアと呼ばれる著作物についての記述(注釈とはいえGNUという文字を見たときは感動しました)、ジャスラックその他管理事業者についての記述、「レコード制作者」とは具体的に誰に当たるのかの記述、キー局とネット局の関係などのさまざまな具体的な記述があって非常にためになります。
まだ精読はできてませんが、手元に一冊、ぜひ!!オススメです。












「ビジネス著作権法」面白そうですね。
前職はコンテンツファイナンスをメインの仕事をしていたので、興味があります。
契約書をみてファイナンスしようにも、
アニメ業界やゲーム業界でまともな契約書にお目に掛かったことはほとんど無いですね。親玉のテレビ局が契約書を取り交わさない伝統が有りましたからね。
そして、問題が起きたら上位組織に都合のよい解釈をする。
だから、どこまでこの会社が負担をおわされるかわからないので非常にリスク管理は難しかったです。
今はもっとも、契約とか法律を重視しなければならないところに勤めているのですが、実際の運用は前例や前任者の行っていたとおり実務ををやっています。
「これじゃ、いけないな」と思ってはいるのですが。
大体、行政の法はそれ自体では?で通達とか例規をみないと全然わからないですからね。
しかも、通達、例規はノーアクションレターとかで申請をかけないと出てこない・・・。
>>takechanさん
お仕事で携わっていらっしゃったなら業界解説は短いしあまり意味は無いかもです。「きちんとした本でここまで!」という感動は味わえると思いますが。判例はとても豊富なのでそこは絶対に読んでいて楽しいと思います。
コンテンツファイナンスは今後とても重要な分野だと思うのですが、難しそうですね。
仕事の変更って難しいですね。変更するとなるとパワーもいりますし、軋轢があることもありますし、そもそもまずはある程度の品質の仕事を自分ができるようになるまで時間がかかりますから。でも、前任者とまったく同じように自分が仕事できるわけでもなく、時代や状況も変わってゆき、そして仕事をやっているのが自分である以上、自分が納得のいくやり方で仕事がしたいなあ、と思います。私はこだわり過ぎて自滅するタイプですが…。
例規まではあたったことがないのでよく分かってませんが、通達は結構ウェブで読めることが多い気がしていました。もっとも、読めてもただの行政府の内部文書なので、それに従ったところで違法性がまったく回避できるわけでもなく、そもそも従える内容かというと疑義をはさみたくなったりすることも多く、うーんって感じです。