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2007年08月11日

「「日本社会」入門 」コリン・ジョイス ブックマークに追加する

「「日本社会」入門 」
コリン・ジョイス

英国人記者が、後に続く英国人に向けて日本社会でいかに生き抜くべきかをおもしろおかしく書いてみたという作りの本。日本人がふだん当たり前のこととして享受していることが、英国人である著者にとってはいかに驚きであったのかが書かれています。

夫が「帯び買い」してきました。そして、私も帯にやられました。以下、帯より抜粋です。

日本で暮らすなら、これだけは覚えておこう。
歌舞伎は歌舞伎町ではやっていない。
日本の「パブ」はパブではない。
作家とサッカーの違いは大きい。
電車が遅れてると思う前に君の時計を疑え。

言われてみれば、確かに歌舞伎町で歌舞伎はやっていません。気付きませんでした。

また、本文にも同じようにびっくり事項がたくさんですが、なかでもびっくりしたのが、食事に関する文書でした。(太字は私)

このときわかったのだが、日本人にとって食べ物とはたんに「食べるもの」ではない。日本人は食べ物について語り、楽しみ、ときには訪れたりさえするのだ。ある料理をたべることだけを(主たる)目的について観光旅行をするなんて、イギリス人のぼくには思いもよらなかった。ぼくだって、たまたま現地で口にした料理がおいしければうれしく思うが、それ以上に食事が旅行の重要な部分を占めることがあるとはそもそも考えもしなかったからである。

地理的にみて、氷河に覆われていたことのあるイギリスは土地が痩せているし、気候と氷河のおかげでやってきた肥沃な土壌に恵まれたフランスやハンガリーからは海を隔てているし、想像するに、保存可能なものを除いて食文化が発達しようもなかった、むしろ発達して幸せだったかどうかが不明、というのは頭では理解しているつもりでした。また、イギリスに行ったときに、いかにイギリスの食事が日本人の口に合わないかも体感してきました。しかし、このように書かれると衝撃でした。

…英国人は何のために旅行をしているのでしょう。

また、古くからのイギリスの格言に「『生きるために食べろ。食べるために生きるな』とある」と書いてあるのにもびっくりしました。とっさに「生きる楽しみはどこに見いだしたら?」と思ってしまいました。でも、そんなことを思うのは土地と気候と海流に恵まれた土地に生まれ育った人間の傲慢である気もします。

また、日本人がいかに正直であるかも書いています。

(前略)日本人は世界でも有数の正直な国民だ。世界中のどの国の人だってウソをつく。しかし、ウソをついていることをいつもおおっぴらに認めるのは日本人くらいのものだろう。日本人は外国人に嬉々としてホンネとタテマエの区別を説明する。

…そういえば、私もイギリスに行ったときに「この人たちは人種差別をしてないんじゃない。人種差別をしてると認めないし、そうだと傍目に分からないようにしているだけなんだ。そして、たとえ白人でもBritish Englishを完璧に話せない限り、一段見下されることは否めないじゃないか。相手は絶対に認めないと思うけど」と勝手な印象をもったことを思い出しました。

同じようなことが、著者の好きな日本語の第3位であるところの「勝負パンツ」という言葉についての解説についても書いてありました。

この言い回しを聞いて、感心しなかったイギリス人の友人はひとりもいない。大事なデートの前に着ける下着を指す言葉に関して、日本語ほどに正直な言語はほかにあるだろうか?『ブリジット・ジョーンズの日記』があれほどのヒット作となったのは、何百万もの独身女性が「こんな風に思っているのは自分だけかしら」と思っていることを率直に表に出したからである。(中略)もし、日本語を知っていたなら、彼らはこれが社会に広く行きわたった慣習だともっと早く理解できていただろうが。

…いや、敵に下手に弱みをみせるとつけこまれるから弱みは絶対に見せない、というのは概念としてはとてもよく分かります。そして、日本は平和な国だったんだなあ、と自分が享受しているものの有り難さが身にしみます。

でも、素朴な疑問として、食事の話もしない、下世話な話もしない、では日々イギリスではどのようなことが、どのような話し方で会話されているのでしょう。そして、今後グローバル化したなかで生き残っていかなくてはいけない人間としては何を話題にすれのが適切なんでしょう。

また、日本って歴史的に本当に平和だったんだなー、と一番思ったのは、日本人の隣人への礼儀正しさや共生の感覚にはびっくりした、として書いてある例です。

曰く、自転車が壊れて自分では直せなくて近所のネジ屋さんを訪ねた筆者は、身体を気遣う言葉をかけてもらったうえに、30分も時間をとって直してもらい、あまつさえ取引先の電話より見知らずの自分を「仕事中だから」と優先し、最後に「たいしたことをしていないからお金はいらない」と言われ、「今度緩んだときに」と六画レンチまで渡してくれたことにびっくりし、彼を「完璧なジェントルマン」と評しています。

「今は少ないかもしれないけど、よくある光景だと思うんですけど」とどこにびっくりしたのかと思ったら「翌週、お返しに大口の注文書を持って店にやってくる」なんてことはあり得ないのにそんな丁寧な対応してくれたことにびっくりした、と書いてありました。な、なるほど。生き馬の目を抜く社会で生き抜く事がいかに難しいのか、何で契約書は英文になった瞬間にあんなに分厚くなるのか教えられます。

他にも、日本人の発明は素晴らしい、なかでも新書というサイズは読みやすく印刷もキレイだ!(全く同感。そして文庫も同じ)などなどのいろんな「英国の人もそう思ってたの」という話や、「そこにびっくりすることにびっくりした」という話が載っています。

最後に、イギリス風ジョークで、日本にやってきたイギリス人をからかおうということで、載っていた以下のような例をあげておきます。

「新宿駅の改札で待っている」とだけ言おう。それ以上具体的な説明をしてはいけない。日本人はたいてい武道をたしなんでいるから、駅の構内やプラットフォームで決してぶつかってはいけないようにと注意しておこう。

…それは普通にアカンやろ。私にはできません。

投稿者 michy : 2007年08月11日 00:15 : 本や雑誌 > 書評(ノンフィクション) |    

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コメント

ニヤニヤさせていただきました
異文化のギャップは
手前側の文化の当たり前なことが当たり前じゃないことに
気づけておもしろいですね
最後のジョークは……

Posted by: とおりすがり : 2007年08月12日 23:39

異文化を知ると自分の文化なり既成概念なりを知る事が出来るのがいいですよね。最後のジョークはアレが著者が言うところのイギリス風のジョークらしいので、「そりゃ、日本人はジョークのセンスが無いって言いたくなるよね」と思いました。

Posted by: michy : 2007年08月25日 06:55


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