「嗤う伊右衛門」京極夏彦

Posted by michy on 9月 7, 2007 in フィクション

「嗤う伊右衛門」
京極夏彦

あまりにレビューを書きたいが書けない本が溜まってきてピンチです。そのうち、同じ作品のレビューを書き直したり書き足したりしそうな気がしますが、書かないよりはいいか〜、と思って書いてみます。
京極夏彦は、その昔、京極堂シリーズを読んでいました。一作目の「姑獲鳥の夏」が一番好きだったのですが、シリーズを読み進むにつれ、私の好みとは段々別の方向にいく印象を受けていました。それでも、なんだかんだ読んでいたのですが、「塗仏の宴—宴の支度」の分冊売りに少しひいてしまい、一時的にミステリ自体に興味を失ったこともあって、それ以来買うのを止めてしまいました。
本書は精神的にあんまりよくなかったときに、「読んでみれば」と勧められたなので、「ひさびさに京極夏彦もいいかー」と素直に読んでみました。お岩さんの四谷怪談の京極夏彦風リメイクです。
私としては、京極夏彦の本は、分厚いがゆえに語りすぎるあたりや、必要以上にキャラが立ち過ぎることがあって、書きたいのは蘊蓄なのかキャラなのかテーマなのか私には判別がつかなくなるあたりが、あんまり私好みではない原因かなー、と勝手に思っています。しかし、本書は語りすぎるわけでもなく、キャラが立ちすぎるわけでもなく、それでいて私好みの恋愛モノで読んでいて幸せでした。
同じ題材やテーマを、ひぐちアサや日本橋ヨヲコが料理すればどうなるんだろう、正反対の展開で正反対の結末になるんじゃないかな〜、と思うんですが、私はこういう展開でこういう結末も大好きです。
長く続けば何でも歪むし、個々人が悪いわけではないからこそ犠牲は生まれ、相手を想うがゆえに気持ちが通じなかったり誰かを不幸にしたりするもの。そんな物語が一つのお話を軸にいくつも編まれています。まさに今の時代にふさわしい物語だと思います。
人間模様も相まって、江戸の退廃的で、それがゆえに美しい様子が、もうなんともいえません。最近は江戸のしぐさなどなど、今からみても分かりやすい江戸の良さを紹介する本が多く見られるように思いますが、一方で、こういう退廃的で今から見ればモラルハザートにしか見えないのも江戸の一面なんだろうと思うので、「ぜひ、一緒に」と思います。
同じようなタイプの本を読んでみたいのですが、どうやって探せばいいんだろう。過去の泉鏡花文学賞を漁ってみるといいのでしょうか。
以下、ネタバレ気味なのでご注意ください。

お岩さんは凛として素敵だと思うものの、それがゆえに最後の行動は悲しいです。何があったって、そこからまた新たに始めればいいと思うし、お岩さんってそれができるキャラなんじゃないかと思っていたのです。誰にでも精神の限界があるってことですかね。
そして、伊右衛門の最後の奇行と「皆、裡(うち)より湧く」や「いずれ屋敷が広過ぎ候。座敷ひとつあれば我は足るなり」という台詞はゾクゾクっときました。気持ちがわかる気がします。たぶん、私がなるべく必要最低限の、どちらかといえば狭い作りの住処を好むのも、何でも新しいものが好きなのも、根っこは同じではないかと思いました。長く続いたものや必要以上のものって「なんかいる」「なんかある」「ざわざわする」と思う瞬間があって、私はそれがなんともいえず苦手です。結局は表裏だったりするので、かえって好きな場合ももちろんあるのですが。
そして、私的名台詞は以下です。

「(前略)誰にも渡したくなかったか」
「へい」
「俺が貰うた」

くぅ。なんともいえません。ここまでこう書いておいて、このオチをこの台詞でもってくるのも、そこに表れる歪んだ愛情というか独占欲も。どんな性描写よりエロい。言われてみたいですねー、こんな台詞。

「コスメの魔法」

そして、どうでもいいうえに発想がアホですが、この物語のお岩さんが「コスメの魔法」に出演して、高樹礼子女子に「キレイを怠るのは犯罪です」と言われて、ハッピーエンドになるバージョンも読みたいなあ、と思いました。

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2 Comments

  • にょろぞ より:

    私も京極作品から遠のいていて、人に薦められてこの本読んだのですが面白かったですね~ 恋愛モノは外れが多いからこそ、確実に面白いものを探したくなる気持ち、わかります。

  • michy より:

    にょろぞさんも同じですか〜。いいですよね〜。私も「白夜行」や「容疑者Xの献身」と並んで良かったです。何かこういう系でオススメがあればぜひお教えください!

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